心理職の資格を考える

こんにちは。つくば心理相談室(カウンセリングルーム)の下城です。つくばから発信しています。

現在日本には沢山の心理支援者を対象とした資格があります。しかし、資格がなくてもカウンセラーやセラピストと名乗ることも、その仕事をすることも可能です。

では資格には一体どんな意味があるのでしょう?

資格は、それぞれ認定する団体・協会において訓練を積み一定の基準に達しているという証明です。

こころは目には見えません。その難しさに対応するためには、相応のカウンセラー(セラピスト)の資質や技能や知識といったものが求められており、それを示すものが資格なのではないでしょうか。

また、カウンセラー(セラピスト)個人だけではなく、認定するその団体・協会が培ってきた訓練システムや、認定基準、試験制度、倫理規定などなど、そういったもの全てが、安心してカウンセリングを受けてもらう為の(ガイド/指針となり得る)ものと言えます。

早速、心理職の資格について見てみましょう。

心理職の資格

心理臨床の世界は今、大きな変化の時を迎えています。今日は心理職の2つの資格についてお話しします。

公益法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定しているのが『臨床心理士』です。

◆ 臨床心理士とは別に、2018年9月、日本初の心理の国家資格『公認心理師』試験が実施され、同年11月に合格者発表があり、2019年には登録を済ませた第1号の『公認心理師』が誕生しました。

臨床心理士とは

上記でも既に述べましたが、臨床心理士は、公益法人 日本臨床心理士資格認定協会が認定する民間の資格です。

以下は協会のホームページの抜粋です。


臨床心理士は、心の問題に取り組む“心理専門職”の証となる資格です。

「臨床心理士」とは、臨床心理学にもとづく知識や技術を用いて、人間の“こころ”の問題にアプローチする“心の専門家”です。


臨床心理士に求められる専門行為とは、

  1. 種々の心理テスト等を用いての心理査定技法や面接査定に精通していること。
  2. 一定の水準で臨床心理学的にかかわる面接援助技法を適用して、その的確な対応・処置能力を持っていること。
  3. 地域の心の健康活動にかかわる人的援助システムのコーディネーティングやコンサルテーションにかかわる能力を保持していること。
  4. 自らの援助技法や査定技法を含めた多様な心理臨床実践に関する研究・調査とその発表等についての資質の涵養が要請されること
  • などです。
  • また、こうした4種の業務について、さらなる自らの心理臨床能力の向上と、高邁な人格性の維持、研鑽に精進するために、「臨床心理士倫理綱領」の遵守5年ごとの資格更新制度などが定められています。

    なお、当協会が設立され、臨床心理士の資格認定がスタートしたのは昭和63(1988)年です。2019年4月1日現在で35,912名の「臨床心理士」が認定されています。

    (太字、下線は筆者による)


    31年で約36,000名は、公認心理師の第1回(9月受験の)合格者が約28,000名ということに比べたら臨床心理士は断然少ない気がします。

    公認心理師とは

    公認心理師法201599日に議員立法により成立し、同年916日に公布、2017915日に施行されました。

    公認心理師とは、公認心理師法により定められた国家資格です。

    公認心理師法は、文部科学省と厚生労働省との共管となります。

    公認心理師試験等について一般財団法人 日本心理研修センター が実施運営しています。

    【公認心理師法】に関する情報は、厚生労働省のホームページに詳しく掲載されています。


    以下はその抜粋です。



    公認心理師とは、公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保健医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者をいいます。

    1. 心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析
    2. 心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助
    3. 心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助
    4. 心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供


    (太字、下線は筆者による)



    第1回公認心理師試験の11月30日の発表では、27,876名が合格となりまた。第1回の北海道の方向けの試験日が別日に設けられたため、その分の合格者は含まれておりません。

    公認心理師資格ができてみて初めて、これら2つの資格は似て非なるものであると感じています。あくまでも私見ですが、臨床心理士はカウンセリングの他に研究などにも重点が置かれ、公認心理師は連携や環境調整といった福祉に近似の役割に特徴がある様に感じられます。

    公認心理師資格はまだ産声をあげたばかりです。みなさまのこころの健康に寄与できるよう、大切に育てていきたいと思っています。


    第2回 公認心理師資格試験

    関心のある方必見。

    2019年の試験日程等は、一般財団法人 日本心理研修センターのホームページで公開されています。

    受験申込期間は、4/17〜5/17

    試験日は、8/4(日)

    合格発表は、9/13(金)

    ⬇︎

    (2019年9月15日追記します。)

    第2回 公認心理師試験の合格発表が9月13日(金)に行われました。

    受験者数:16,949人

    合格者数:7,864人

    合格率:46.4%

    でした。

    受験されたみなさま、お疲れ様でした。

    さらなる専門性の追究

    新しい資格の出現は、日本における心理に関する分野の大きな変革であり、私という個にとっても地殻変動をもたらす出来事となりました。

    公認心理師試験を通して、私はなぜ心理の道を志したのか、何をしたいのか、どうありたいのか、こういったテーマに向かい合うこととなり自問を繰り返しています。

    その方の生きることのできていない一面をも含めた『こころの全体性』を生きること、分析心理学で云うところの『個性化※1』への歩みを支えたい、それが今の私の答えです。

    ※1)個性化とは、自己実現と言い換えるともう少しイメージしやすいかもしれません。平たく言うと、少し乱暴ではありますが、真の意味で自分らしくある(自分を生きる)ということであり、全体としての自分に近づいて行くことです。その方の個性化の過程をお手伝いしたいと考えています。

    心理の道を志した初心を胸に、ユング心理学に依拠した心理支援のための自己研鑽を真摯に続けて参ります。

    まとめ

    今回は『臨床心理士』と『公認心理師』の2つの資格について概観しました。そして、私自身のさらなる専門性の為に『ユング心理学(分析心理学)』の追究について触れました。

    臨床心理士も公認心理師も共に自己研鑚が義務付けられています。それは心理支援の専門職にとって、大切なことだと考えています。


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