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【錬金術】が示すこころの変容 ~人はなぜひとりでは変われないのか~

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人は、考え続けることは一人でもできます。
けれど、こころが深いところから変わるとき、その変化はしばしば誰かとの関係の中で起こります

話しているうちに、思いがけず自分の本当の気持ちに触れた経験はないでしょうか。
対話の中で、はじめて見えてくるこころの動きがあります。

分析心理学では、このようなこころの変容を理解するために、錬金術という象徴がしばしば参照されてきました。

錬金術は、卑金属から金を生み出そうとする試みとして知られています。
しかし精神科医 C・G・ユング は、その過程の中に、人が変わっていくときのこころの動きを読み取りました。

錬金術の象徴は、混乱や停滞を含みながらも人が変わっていくプロセスを、静かに示しているように思われます。

このコラムでは、錬金術の象徴を手がかりに、こころの変容について考えてみたいと思います。

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錬金術とは何か

錬金術の図解には、奇妙なフラスコや象徴的な絵が数多く残されています。

錬金術とは、卑金属を溶かし、変化させ、やがて金を生み出すことを目指した営みです。

それは単なる化学的な試みではなく、象徴的な意味を持つ探究でもありました。

錬金術の作業では、錬金術師がひとりで作業するのではなく、弟子とともに進められることが多かったとされています。

そして作業は必ず「器」の中で行われました。

素材がどれほど揃っていても、
それを受けとめる器がなければ、
変化は始まらないと考えられていたのです。

ユングは、錬金術の文献を研究する中で、そこに人のこころの変容の象徴を見出しました。

こころの変容もまた、最初から光の中で起こるわけではないのです。

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器というもの

錬金術では、変容は「器」の中で起こると考えられていました。

それは素材を閉じ込めるためではなく、変化が起こるまで保ち続けるためのものです。

こころの変化も、むき出しのままではなかなか起こりません。

安心して揺らぎ、崩れることができる「場」が必要になります。

カウンセリングルームもまた、そのような器のひとつです。

評価されず、
急かされず、
正解を求められない場所。

その器の中で、言葉にならない思いが言葉を探し、沈黙が意味を持ちはじめるとき、
こころは少しずつ動き出します。

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黒くなる時期(ニグレド)

錬金術では、変容はまず「黒くなること」から始まると考えられていました。

この段階は ニグレド(黒化)と呼ばれています。

黒くなるとは、それまでのかたちが崩れ、分からなくなることです。

変わろうとするとき、
こころはしばしば重くなり、
暗くなり、
先が見えなくなることがあります。

自信を失ったり、前より悪くなったように感じたりすることもあるでしょう。

けれど、それは失敗ではありません。

こころが本当に変わろうとするとき、
古いかたちはそのままでは残れないのです。

一度溶け、混ざり合い、分からなさの中を通る。

その時間が、新しいかたちを生み出す準備になります。

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関係という錬金術

錬金術には コンイウンクチオ(結合)というテーマがあります。

それは、異なるものが出会い、葛藤を通して新しい全体性が生まれるという過程です。

結婚やパートナーシップも、よく似た側面を持っています。

原家族から離れ、まったく異なる歴史を持つ他者と関係を築いていくこと。

そこでは、自分の求め方や距離の取り方、理想化や恐れがはっきりと浮かび上がることがあります。

心理学者 河合隼雄 は、次のように述べています。

関係とは、ただ幸せになるためのものではなく、自分の深い部分と出会う錬金術の器でもあるのです。

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金とは何か

錬金術が目指した「金」は、欠点のない完全な存在ではありません。

黒くなり、崩れ、分からなさを通り抜けたあとに なお残るもの。

それは、

弱さも
矛盾も
影も含んだまま

「これが私だ」と 引き受けて立てる在り方です。

関係においても同じです。

相手を理想のかたちに変えることでもなく、
自分を消して合わせることでもない。

違いを抱えながら、それでも共に在ること。

揺れながらも、
自分の足で立ち、
自分の速さで生きていくこと。

錬金術でいう「金」とは、完成ではなく、
その人自身の新しい生き方なのかもしれません。

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つくば心理相談室について

つくば心理相談室では、こころの変化を急がせるのではなく、
安心して語れる「器」でありたいと考えています。

人生の中で、誰もが迷いや混乱の時期を経験します。
それは、ときに「黒くなる」ような感覚を伴うこともあるでしょう。

けれど、その時間の中でこそ、新しいかたちが少しずつ生まれてくることがあります。

ここでは “自分自身のこころに出会う時間“を、大切にしていきたいと思っています。

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