Column

出逢うということ

わたくしには、大好きな絵本があります。

『なまえのないねこ』という絵本です。

名前を求めていた一匹のねこが、本当に欲しかったものに出逢う物語です。

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この絵本を読むたびに、わたくしは「名前を呼ぶ」ということについて考えます。

名前を呼ぶことは、ただ相手を呼び分けるためだけのものではありません。

目の前にいる、その人に向かって呼びかけること。

「あなた」という、かけがえのない存在にまなざしを向けることでもあるのではないかと思います。

そのことは、つくば心理相談室で日々お会いしている方々との時間にも、どこか重なっているように感じています。

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お名前でお呼びすること

つくば心理相談室では、お越しくださる方を、下のお名前でお呼びしています。

ご夫婦や親子、ご家族でお越しくださることもありますので、同じ名字の方を区別するために、自然とそのような呼び方になります。

けれど、それだけが理由ではありません。

名前は、その方だけのものだからです。

わたしたちは日々、さまざまな役割のなかで暮らしています。

親として。

子どもとして。

夫として、妻として。

職場では上司や部下として。

学校では先生や生徒として。

そのどれも大切な役割ですが、カウンセリングの時間には、それらを少し脇に置いて、ひとりの人としてお会いできたらと思っています。

お一人おひとりに、それぞれの人生があり、その方だけの歩みがあります。

下のお名前でお呼びすることにも、その方を、ひとりの人として大切にお迎えしたいという、わたくしなりの思いがあります。

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もちろん、下のお名前で呼ばれることを好まれない方もいらっしゃいます。

ときには、お名前そのものが、その方の歩んでこられた人生や、人との関係、大切な思いにつながっていることもあります。

だからこそ、呼び方もまた、その方との出逢いのなかで大切にしていきたいと思っています。

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「先生」と呼ばれること

初めてお越しになる方のなかには、わたくしのことを「先生」と呼んでくださる方も少なくありません。

その呼び方を、すぐに訂正することはしていません。

「先生」という呼び方にも、その方なりのお気持ちがあるように思うからです。

「どうしたらよいのか、道を教えてほしい。」

「この苦しみから抜け出したい。」

そんな思いで相談室の扉を開いてくださったのかな、と感じることがあります。

相談室を訪れる方のなかには、長いあいだ一人で悩み、苦しみ、藁にもすがるような思いで来てくださる方もいらっしゃいます。

一刻も早く楽になりたい。

答えがあるなら知りたい。

そう願われるのは、ごく自然なことだと思います。

ですから、呼び方も、その方の思いとして受け止めています。

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面接を重ねるなかで、お名前で呼んでくださるようになる方もいらっしゃいます。

最後まで「先生」と呼んでくださる方もいらっしゃいます。

どちらが良いということではありません。

その呼び方もまた、その方との関係のなかで育まれていくものなのだと思っています。

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「ひとりの人」と会う

わたくしは、小さなお子さんから大人の方まで、幅広い年代の方とお会いしています。

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子どもと会うときも、子どもに会うために全力です。

大人と会うときも、大人に会うために真剣です。

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もちろん、子どもにも真剣ですし、大人にも全力です。

けれど、それぞれの年代だからこその出逢い方があります。

子どもとは遊びや表現を通して、身体もろとも出逢っていくことがあります。

大人の方とは、言葉を重ねながら、その方が生きてこられた時間に耳を澄ませます。

「子どもだから」「大人だから」ではなく、いつも、ひとりの人と会っている。

そのような気持ちで、お一人おひとりと向き合っています。

その方にしかない人生があり、その方との間にしか生まれない関係があります。

だから、同じカウンセリングはひとつとしてありません。

目の前にいるその方と、そのとき、その場で出逢いながら、時間を重ねていきます。

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その方の歩みに寄り添う

カウンセリングに来られる方の多くは、少しでも早く楽になりたいと願っていらっしゃいます。

長いあいだ苦しんできたからこそ、答えを知りたい、すぐにでも変わりたいと思われることがあります。

その切実なお気持ちを、わたくしは大切に受け止めたいと思っています。

けれど、こころは、頭で理解したからといって、すぐに変わるものではありません。

セラピストが先回りして答えを伝えれば、それで何かが解決するということでもありません。

ご自身のなかで、

「あぁ、そういうことだったのか。」

と腑に落ちる瞬間があります。

言葉にならなかった思いが、少しずつ言葉になっていくことがあります。

歩みには、その方ならではの歩幅があり、その方にとっての時があります。

急ぐことでも、急がせることでもなく、その方の今に寄り添いながら、ともに歩んでいきたいと思っています。

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「このあなた」と「このわたし」

恩師から教わった、大切な言葉があります。

「このあなた」「このわたし」

カウンセリングは、セラピストが何かを教える時間ではありません。

また、答えを渡す時間でもありません。

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「このあなた」と「このわたし」が出逢い、その関係のなかで、ご自身が、ご自身と出逢っていく時間なのだと思っています。

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「一度、話してみよう。」

そう思って相談室の扉を開いてくださった、その一歩もまた、ご自身の歩みです。

その歩みに寄り添いながら、一緒に考え、一緒に迷い、ときには立ち止まりながら、その時間を重ねていきます。

そのなかで、少しずつ関係が育ち、語りが生まれ、ご自身との出逢いが起こっていく。

わたくしは、そのような時間を大切にしています。

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出逢いを大切に重ねながら

相談室には、さまざまな方がいらっしゃいます。

長く通ってくださる方。

少しお休みを挟みながら、また戻って来られる方。

人生のある時期だけをご一緒する方。

それぞれに、異なる時間があります。

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だからこそ、来てくださる方それぞれと、それぞれの出逢いがあります。

その方にしかない人生があり、その方との間にしか生まれない関係があります。

その出逢いを大切に重ねながら、その方があらためて、ご自身と出逢っていく時間をご一緒できたらと思っています。

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それが、つくば心理相談室が大切にしている【「わたし」に出逢う時間】です。

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